家電 買取からの重大な予告

建設省、国土庁の調査によって、全国のダムが予想をはるかに上回る土砂の流入によって埋まっていることが明るみに出ているが、これもその代償である。 その証拠に山崩れは年間2000〜5000件も発生する。
建設省の87年の調査によれば、地すべりの危険個所は一万9043カ所、がけ崩れは6万一1570カ所、土石流は8万6一144カ所もある。 このうち防災工事がすんだのは2割に満たない。
少しでも山に入れば、どこででも山崩れの跡が見られる。 全国各地で災害の被害者が、自然の破壊を放置しておいた地方自治体や国、破壊を引き起こした業者を相手どって起こす訴訟が増えてきたのも、これらの災害が実は災害に名を借りた人の災いであったことが、はっきりしてきたために他ならないだろう。
国際的な救援1988年のバングラデシュ洪水は国際的にも大きな反響を巻き起こした。 その被災規模の大きさもさることながら、地球温暖化によって近い将来に海水面が上昇したときには、世界各地の低湿地でも同じことが起きるのでは、という不安が広がったためだ。
89年の先進国首脳会談(アルシュ・サミット)では、バングラデシュの恒久的な救済が取り上げられた。 一国のために先進国7ヵ国が立ち上がるというのも異例のことである。
それを受けて世界銀行や日、米、仏などの各国援助機関が洪水の制御計画案を練り上げ、89年11月にロンドンで世銀主催で開かれた会議で発表された。 もっとも積極的なのがフランスの「20年間に100億ドルをかけて、延べ4000キロの堤防を築く」とする案だった。
これには米国の専門家が、「巨大な堤防を築けば、水害の被害は少なくすることはできても、肥沃な土砂が補給されなくなって農地がだめになる」と批判している。 これに対して、米国国際開発局(USAID)の案は、「洪水の予報体制を強化するとともに、人々が洪水と共存できるような工夫を援助する」というものである。

しかし、この米国案は住民をあまりにもばかにしていると地元から反発を買った。 日本は、フランス案のように莫大な経費をかけることには消極的で、また国連開発計画(UNDP)は米仏の折衷をめざしている。
しかし、各国の専門家はこの制御案の作成途上で、この国の抱える生態系の崩壊現象を改めて確認することになり、これらの対策で洪水が克服できるという声が前にもまして小さくなってしまった。 私には、バングラデシュで起こっている事態は21世紀の地球を予告しているように思えてならない。
おそらく、バングラデシュのように自然環境が破綻し、政治的にも経済的にも混乱して国際社会が救済に乗り出さざるを得ない国のリストが次第に長くなっていくのではないか。 アフリカのエチオピア、マリ、ブルキナファソ、中南米ハイチ、ニカラグア、エルサルバドル、ボリビア、さらにアジアではフィリピンやネパールなどが、すでにそのリストに入っているか、近い将来に入ることになろう。
空から見る「緑の黒死病」バーデンバーデンは、西ドイツ南西部の由緒ある保養地だ。 古代ローマ時代に発見された温泉は、ワーグナーやドストエフスキーら多くの著名人が訪れたことでも知られる。
ただし、温泉といっても水着で入る巨大な温水プールのようなものだが。 この町のすぐ背後には、「黒い森」(シュバルッバルト)と呼ばれるヨーロッパきっての美林が広がっている。
ドイツ人が「心のふるさと」として誇りにする森でもある。 シーザーの『ガリア戦記』は、紀元前58年〜前51年にかけてのガリァ(現在のフランス)遠征記だが、その中に「黒い森」の一帯が登場する。

「この地方の誰でも、6十日間の行程をかけて森の果てにまで行ったものはいないし、森がどこからはじまるかも聞いたものもいない」(近山金次訳、岩波書店)と、森の巨大さを書き記している。 この森が行く手を阻んで、前進できなかったという記述もある。
町の郊外から、チャーターした軽飛行機で飛び立った。 上空に舞い上がると、眼下には黒々としたトウヒとモミの森が横たわっている。
これを見て「黒い森」の名前の由来を納得した。 この森は、ドナウ川の源流地帯に60万ヘクタールにわたって茂っている。
だが、飛行機が森のもっとも高い「カッッェンコップ」(ネコの頭)に近づいたときには息を飲んだ。 稜線に沿って森がはげ落ちて、まったく木がない。
白く枯れた木の残骸と露出した岩が横たわる荒涼とした光景だ。 この一帯に85年以後、5000本ほどの木を試験的に植林したが、まったく根づかなかったという。
あたりをよく見ると、一面に茂っていたように見えた森は、円形脱毛症よろしくあちこちで抜け落ちている。 操縦士が指さす方向を見ると、斜面の緑が一面に黄色味を帯び、その中から葉を失った枝が酸性雨で枯れたカッツェンコップの山頂その中か骸骨のように突き出している。
「黒い森が黄色の森になっちゃった」と冗談まじりに彼はいう。 酸性雨の被害がこれほど深刻化していたのである。
翌日、地元のオッテンホーフェン営林署長、H・Sさんに案内を頼んで、車と足で森の中を歩き回った。 森内の木が枯れる寸前になると、害虫の温床にならないように伐採してしまうので、倒木は思ったよりも少ない。
その代わりに数百メートル4方にわたって伐採した跡があちこちにあった。 途中で地元の人が、伐り倒した木の枝を払っていた。

話しかけると、切り口の年輪を見せてくれた。 樹齢80年ほどのブナの木だったが、確かに最近10年ほどの年輪が際立って狭くなっている。
木の生長は以前に比べて4分の一から半分以下になっているという。 Sさんが、若い木を引き抜いて根を調べている。
健康なら、細かい根がびっしりとついているはずが、ほとんど見当たらない。 根がすっかりやられてしまっている。
辛うじて立っていても、まったく葉を落として胴樹影が透けて見えるトウヒ、枝の中ほどの古い葉だけが落ちてしまったモミ・・・。 針葉樹は毎年、枝先が伸びてそこに新しい葉が出る。
しかし、古い葉は数年間も枝にくっついているために、毎年のように葉を更新する広葉樹と比べて、酸性雨の影響を長期にわたって受けやすい。 枝先の新しい葉までも枯れているのは、もう末期症状だ。
自動車道の行き止まりは、高木はなくなって低木の薮になっていた。 ただ、葉がすけすけになり、残った葉も黄色く変わった4本のモミだけが残っていた。
その前に掲示板が立っている。 それには「この一帯は酸性雨によって枯れてしまいました。
私たちの森を何とかして酸性雨から守りましょう」とあった。 Hさんは「ここまでやってきたハイカーも、酸性雨の被害に気づかずに帰ってしまうものが多い。

その警鐘として残してある」という。 地元のバーデンピュルテンベルク州の調査では、軽度の被害まで含めると「黒い森」の75パーセントまでが酸性雨の被害を受けているという。
同州政府は、被害が急上昇してきた85年に「被害はあらゆる樹種に拡大しており、森を守るためには大気汚染を規制するしかない」と緊急のアピールを出した。 最近とくに盛り上がってきた西ドイツの環境保護団体は、「黒い森を救え!」を合言葉にしている。
「黒い森」は、完全な天然林のように見えるが、実は半分ほどは人工林だ。


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